団子サッカーとは
小学校1~3年生などの低学年のサッカー指導をしている方が必ず目にするのが『団子サッカー』です。団子サッカーとはボールを中心に敵味方が入り混じってボールと人の集団がそのまま移動する光景の事を言います。
試合で団子サッカーになるとよく聞かれる声が、『広がりなさい!』『空いているところにパスしなさい!』などの声が、コーチだけでなく観客席からも聞こえてきます。(^_^;)
では、なぜ子ども達のサッカーは団子サッカーになってしまうのでしょうか。本当に子どもたちは何も考えてないのでしょうか?答えはNOだと僕は思っています。その答えは子どもたちが起こすアクションをしっかり観察すれば見えてきます。
団子サッカーにもメリットがあり、子どもが上達する上で欠かせないステップでもあります。今回は団子サッカーについて解説するとともに、自然に解消できる方法を僕の経験上からお伝えしていこうと思います。
結論から言うと
団子サッカーの解消方法についてまず結論から言うと、止める・蹴るの練習を行うことです。
サッカーを始めた子どもは『自分とボール』という意識が最初に生まれます。そこでどんなプレーをするかというと、キックやドリブルを沢山行います。
ボールを蹴って追いかける(ボールの認知・ボールを蹴りたい)
→ボールをドリブルで運ぶ(ゴールの認知・ゴールに決めたい)
その過程で、試合では自分以外に相手がいるので団子サッカーが生まれるのですが、次のステップとして、意識が『自分と味方』に変わっていきます。
自分の目の前に相手がたくさんいて、さらに年齢が上がるにつれてピッチも大きくなります。(小学校3年生では8人制で大人サイズのハーフコートで試合する)そうなると自分だけではどうしてもゴールが取れなくなるので、子どもたちはゴールに近い味方にパスをするという考えが芽生えていきます。
そのため、『自分と味方』の意識が生まれれば、自然と団子サッカーが解消されていくという事になります。
いつ頃から止める・蹴るの練習をすればいいのか
それではここで、いつ頃から止める・蹴るの練習をすればいいのかという疑問が浮かぶと思います。サッカーを始めた頃の最初からやるのか?試合形式が8人制になる小学3年生から練習すればいいのか?
練習の時期についてですが、試合が出来る年代になったら各年代で難易度を変えて行うべきだと考えています。その理由としては、子ども一人一人で成長段階が異なり、個性も異なるからです。
サッカーを始めた頃の練習では、相手がいない状況で練習をするのですが、試合になると必ずゴールを守る相手がいます。そこで子どもは成長段階や個性によってプレースタイルが変わっていきます。
◯身体が大きい・ボールへの執着心が強い・足が速い → ドリブルで運んで自らゴールに向かう
◯身体が小さい・人混みを嫌う・自信がない → 味方の後ろを追いかけてこぼれ球を拾う。コーチからパスをもらおうとする。
どちらが良い・悪いはありません。子ども自身が自分の個性を理解した上で最善のプレーを選択しているのです。
例えば、後者の子どもたちに対してずっとドリブル練習だけをさせてしまうと、練習しても身体の大きな他の子にすぐに取られてしまい、ネガティブな感情になってしまいます。その逆も然りで、足が速くてドリブルが得意な子にずっとパス練習させても、自分でボールを運べるのにパス練習してもつまらないという気持ちになります。そのため、練習を提供するコーチとしては出来る限り、万遍なく練習をさせることが大事になります。
運ぶ人と蹴る人と止める人
練習をするにあたって2人1組でずっとパス練習をしていてもつまらないと感じる子どもは多いと思いますので、万遍なく練習させるためには工夫が必要になります。下記の練習は一例です。
中央にボールをたくさん置き、それを自分たちの陣地に集めるというゲームになります。最初は手で運んで陣地にボールを持っていきます。そこでルールを覚えてもらい、次はドリブルで陣地に運んでいきます。ドリブルができた次は自分の陣地に味方がいればパスもOKというルールにします。そうすることで、ドリブルが得意な子はドリブルで、パスが得意な子は味方と協力してパスをするなど、個性によって選択するプレーが変わっていきます。このようにプレーを限定する練習だけでなく、プレーを自分で選択できる練習をすると良いでしょう。
Soccer Enriches Life
これがそのまま自分たちの試合に反映されます。ボールを運ぶ人、パスで繋ぐ人、パスを受ける人と役割がチーム内で見えてくるようになります。それを子どもたち同士で個性と認めあえるようになると、ボールサイドにはドリブルが得意な子が、少し離れたところにパスが得意な子が、空いた広いスペースにボールを受けようとする子が自然と出てくるようになります。
サッカーを知っている大人から見ればその現象が自然に発生するまではとても長く感じてしまい、早く修正したい気持ちになってしまうと思いますが、人に言われてよく分からないままプレーするよりも、自分たちで考え、気づいて行動に起こす方が、後々の成長度合いが変わってきます。指導する大人は子どもたちの成長や将来を見越して、子どものプレー選択を温かく見守るのが良いのではないかと思っています。
団子サッカーのメリットとは
団子サッカーの解消方法をここまで説明してきましたが、最後に団子サッカーのメリットも解説したいと思います。
例えば、団子サッカーを経験せずに小さいころからポゼッションだけを練習してきた選手はどうなるか想像してみてください。
自分たちがボールを支配しているときはそれこそスペイン代表のようなプレーができるかもしれません。しかし自分たちが劣勢の時やロングボールを多用してくるチームと対戦した時はどうでしょうか。思った通りのプレーができなくなりますよね。そんな場面で例えば日本代表の遠藤航選手や守田英正選手がいたら、献身的に身体を張ってボールを奪い、繋いでくれます。
団子サッカーは、今後サッカーしていく上でとても大切な、身体の使い方や球際の強さ・闘争心などを自然と身に付けることができるのです。そのため、可能ならば全ての選手が団子サッカーを経験し、対人スキルを獲得した中で技術も身に付けることができればその選手の可能性は大いに広がります。だからこそ、年齢で縛らず個人差でカテゴリ分けすることや、適正な人数・広さでのゲームが重要になってくるのだと思います。
子どもたちの可能性を信じること
サッカー指導されている方や親御さんは、選手に期待すればするほど、どうしても力が入ってしまいます。それが正しい方向に向かえば良いのですが、時に強く当たってしまったり、プレーを限定させるような声掛けをついしてしまうこともあります。団子サッカーも大人から見たらとてももどかしく、強引に卒業させたくなりますが、そこは子どもたちの可能性を信じてあげましょう。
子どもは大人が思っているよりもよく考えて行動しています。それは選手をよく観察していると見えてきます。選手のプレーに対して、まずはよく観察して『なぜそのプレーを選択したんだろう』と考えてみてください。そして選手に聞いてみてください。そうしたら、自分の思っている以上の答えがもしかしたら返ってくるかもしれません。
自分の考えやアイデアを超える選手が出てきたら嬉しくなりますよね。もしかしたらあなたが教えている選手が将来日本代表で活躍する日が来るかもしれません。だからまずはその第一歩として選手を信じて、団子サッカーも楽しく見守ってあげましょう(^^)
1セッションメニュー ウォーミングアップ シュート ディフェンス ドリブル パス&コントロール ポゼッション 崩し 練習メニュー
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